タミヤ・エナメルの怪
先日、私が作ったサボイアも、せっかくなのでちゃんと塗って最後まで仕上げようと基本塗装を終えました。
今回は、多くのモデラーさんが敬遠している(?)、クレオスの水性ホビーカラーで塗装してみました。色はモンザレッドです。
水性アクリルは、実は完全乾燥がものすごく遅く、触指乾燥しても中はしばらく乾かないので、安心して持ったりすると簡単に指紋が付いたりしますよ。注意注意。
さて、3日ほど乾燥させましたので、細部の筆塗りをしていきます。
乾燥が遅い分肌が伸びるので、ラッカーに比べて滑らかな表面が得られます。ただ、素手で掴んだりするのは怖いので、綿手袋をして優しくそーっと持ちましょう。
エンジンのオイルクーラー部を金色に塗りますが、下地がアクリルなのでタミヤ・エナメルのX12ゴールドを使います。
ところが、なんかオカシイんですね。エナメルらしい伸びが得られず、ちっとも塗れていきません。そして何度か筆を運んでいるうちに、なんと筆が赤くなってくるではありませんか!?
見ると、アクリルの赤が溶け、下地の白サフが透けて見えてます。
筆にラッカー溶剤が残っていたのかと思って筆を代えても同じ。「エ!? エナメルってアクリル侵したっけ?」と、もうワケが分かりません。
しかも、筆を洗おうとしても凝固して洗えないんですね。
洗うためには、ツールクリーナーのような洗浄用溶剤が必要なのです(メーカーに問い合わせて裏はとりました)。
エナメル溶剤のビンには、用途として「筆洗い」と明記されていますし、X12のビンにも「溶剤X20で洗う」としか書いてありません。
実は、この伸びのなさと凝固はXF6コッパーでも同様です。金属色の中でもこの2色だけに発生する特異な現象です。
我々が使っているマテリアルには、このように知らない人は絶対に知らない現象がまだまだ潜んでいるかも知れません。また、メディアの情報も絶対ではありません。注意して使いましょう。
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コメント
こんにちは根生です。
私はペイントマーカーのX-12を使っていますが、こちらはアクリル塗料を侵しません。瓶入りのX-12特有みたいですね。ちなみに私の手持ちの瓶入りX-12もアクリル塗料を溶かしました。実に不思議な現象ですね。
投稿: 根生 | 2011年8月 6日 (土) 16時46分
根生さん、こんにちは。
そうですか、ペイントマーカーのX11はモデラー必携ですがX12は持ってませんでした。
でも、普通我々は「エナメル」とか「アクリル」という一括りで塗料を見てますから、その中でも特性の違うものがあるとは夢にも思いませんでした。
それとも、みんな知っていて、今頃になって私一人で騒いでいるのでしょうか。
投稿: Bluebell | 2011年8月 6日 (土) 17時02分
BlueBellさん
こんばんは。
タミヤエナメルのゴールドとコッパーはラッカー系のようです。
臭いをかいでみると、クロームシルバーとは明らかに異なっています。
タミヤやハンブロールのエナメルシンナーでは伸ばせませんが、Mr.カラーやガイアカラーのラッカーシンナーですと綺麗に伸びます。
投稿: tomboy07 | 2011年8月 6日 (土) 20時54分
tomboy07さん、こんにちは。
私もそう思ってメーカーさんへ連絡したのですが、金属臭だといって取り合ってもらえませんでした(あまり詳しくは書けませんが)。あの臭いは明らかにラッカー系の刺激臭であり、金属臭ではないはずです。
だって、それを調べていたおかげで店中にシンナー臭が充満し、来店したお客さんが「ラッカーくさい」と言ってましたから。
心配になって店のエナメル全色を1本ずつ嗅ぎまわったため、私も気分が悪くなっちゃいました。
投稿: Bluebell | 2011年8月 7日 (日) 09時44分
こんばんは。
>私もそう思ってメーカーさんへ連絡したのですが、金属臭だといって取り合ってもらえませんでした(あまり詳しくは書けませんが)。
タミヤは製品に対する真摯な態度があると思っていましたが、残念。
>心配になって店のエナメル全色を1本ずつ嗅ぎまわったため、私も気分が悪くなっちゃいました。
職業病にならないで下さいね!
投稿: tomboy07 | 2011年8月 7日 (日) 22時52分
tomboy07さん、こんにちは。
私もそう思っていましたので、裏切られた気分で残念です。
それならそうと、ユーザーに周知徹底しておくべきです。メーカーだけが知っていても何にもなりません。こんな対応、業務用製品だったらあり得ないですよね。
私、今回これを調べるために溶剤1本とコッパー1本をおろし、1時間を浪費しました。どうしてくれるんでしょうか?
投稿: Bluebell | 2011年8月 8日 (月) 09時50分
こんばんは
まだまだ知らないことが多いんですな・・・
普段エナメルは基本塗装ではあまり使いませんがX12は銃弾の塗装などに使う事があるので注意します。
貴重な情報ありがとうございます。しかしタミヤの対応は少し悲しいですね・・・
投稿: 同志99 | 2011年8月 9日 (火) 23時31分
えええ…こ、これって重大な問題では…
知りませんでした。私もエナメルは多用するので、以後
気をつけて作業することにします。
投稿: 燻(いぶり) | 2011年8月10日 (水) 01時01分
同志さん、こんにちは。
これは、「我々が知らないこと」というより「知らされていないこと」なんですね。製品の品質に関わることですから、告知するべき事項です。それをしないで何十年もまかり通っているわけですから、甘い業界ですよ…
もしくは、タミヤもホントにこの事実を知らないのか…。別にタミヤは塗料メーカーではないですからね。
投稿: Bluebell | 2011年8月10日 (水) 18時13分
燻さん、こんにちは。
重大な問題だと思います。販売元がうたっている性能を満たしていないわけですから。それをわざわざ教えてあげたのにまともに取り合わないというのは、どういうわけでしょうね。
投稿: Bluebell | 2011年8月10日 (水) 18時17分
初めまして。
もうお気づきかもしれませんが、最近タミヤさんのHPに、X-12とXF-6についての注意が告知されました。
(HP内の、「タミヤからのお知らせ 2021/9/14」の項目です)
ずっと前にブルーベルさんのこの記事を読んだ覚えがあり、私もずっと気になっていたので、そのことがやっと公式に認められたんだなあと思いました。
(十年もかかったのが残念ですが…)
「おいタミヤさん!ブルーベルさんが正しかったんだぞ!」と言いたくなり、ついコメントをさせていただきました。
人生色々ありますけれども、これからも無理のない範囲でプラモデルの記事を更新していってください。
ブルーベルさんの記事を楽しみにしています。
投稿: JS-4ファン | 2021年10月 4日 (月) 00時09分
JS-4ファンさん、こんにちは。
実はワタシもこの告知に気付きまして、ちょっとあきれてしまった次第です。
私が気付いて、タミヤに「不良品では?」ときちんと問い合わせたのに、10年も経ってからの一般告知とは、遅すぎますし、ちょっと不自然ですね。
タミヤはあくまでもプラモデルメーカーであって塗料メーカーではありませんから、私から報告が行くまで知らなかったとしても無理はないのかもしれません。
でも、そういうクレームが合った時点で、製造を委託いしているメーカーに問い合わせて、事実を周知するべきですよね。だって、ビンにはX20で薄め・洗いをすると書いてあるのにできないのですから。
私からの問い合わせについては、相手はたかが模型屋、素人だから適当に答えとけば分かるまいという考えがあったのかもしれません。
今回、急に告知となったのは、なんらかの圧力がかかった(無視できない相手から指摘された)のかな?と推測してます。
でも、そのたかが素人が10年も前に気付いてたんですけどね苦笑。
投稿: Bluebell | 2021年10月 4日 (月) 13時24分
ブルーベルさん、
お返事をありがとうございました。
確かに、業界内の有力者からの指摘によってようやく…ということかもしれないですね。
それにしても、X-12もXF-6も依然エナメル塗料として販売し続けているのですから、常識的に考えればエナメル溶剤で拭き取ったり洗浄したりできるように製品を改良するのが筋ですし最優先ですよね。
この二色だけはエナメル塗料としての特性を利用できないけれど、その旨告知はしたよ、ということで済ませようとしているのなら、これはもう「居直り」以外の何物でもありません。
告知文中の、原料が云々といった記述も、改良を避けて現状を維持するための言い訳としか思えません。
現在の技術や他社のラインナップを考えても、やむを得ずこうしているのだ、というのは説得力がまるでないんですよね。
…すみません、他人様のブログに長々と(笑)。
このブログ記事や当時のコメントの数々が、この件に対するメーカー側の不誠実な対応に関する貴重な証拠となっていますね。
タミヤさんは大好きなので、この件については本当に残念です。
投稿: | 2021年10月 4日 (月) 23時25分
すみません、先ほどの投稿に投稿者名を入れ忘れておりました。失礼しました。
投稿: JS-4ファン | 2021年10月 4日 (月) 23時28分
JS-4ファンさん、こんにちは。
この時、アクリル塗料が溶けたことについても、「塗料中に含まれる金属粒子が、下地のアクリル塗料を削ってしまうんですよ」みたいなことを言われました。そんなわけはないので「ウソ~笑!」と思いながら、素人だと思ってナメてるな笑と思いながら聞いてました。
においも、明らかにエナメル塗料臭ではなくラッカーのようなにおいがします。他の金属色にはないことなので、X12に使っている金属顔料が、エナメル溶剤では分散できないのでしょう。
ペイントマーカーのX12は大丈夫なのですから、ビン入りのほうを改良すべきだと思うんですよね。おそらく、パクトラタミヤからタミヤカラーに変わって、ずっとこうだったのでしょう。
私は、ビン入りのX12は在庫を売り切った時点で取り扱いをやめて、ペイントマーカーに替えました。信用できないものは、売れないですからねぇ。
タミヤは、業界最大手ですし、対応もシッカリしている印象が強いので、こういう件も、たとえ素人からのクレームであっても、もう少し真摯に対応していただきたかったです。
投稿: Bluebell | 2021年10月 5日 (火) 09時26分