私的アクリル塗料考
先の記事で、「ラッカー塗料よりもアクリル塗料のほうが、細かいエアブラシ塗装はやりやすい」と書きましたが、実際にはアクリル塗料はキライというかたも多いでしょう。
その原因は、おそらくラッカーに比べてノズルの詰まり感が強いからではないでしょうか。それを防ぐため、ラッカー溶剤で薄めるのはよくある方法です。
ラッカー塗料は、時間とともに溶剤が揮発したり樹脂分が固まってきて、粘度が上がります。つまり、ビンの中で水あめ状になってきます。
それに対し、アクリル塗料の場合は、液自体の粘度はそれほど上がりませんが、部分的に顔料や樹脂が固まって粒状のものが漂うようになります。ビンを開けた時、ビンの上のほうで顔料がカリカリに固まっています。また、中を撹拌棒でかき混ぜても、ビン底の顔料の固まりが棒の先にゴッソリ付いてきて、なかなか混ざってくれません。これが大きな違いのように感じます。
そのため、吹いている途中でもノズル内にこの固まりが出来て、それが詰まって吹けなくなったりするのではないでしょうか。筆塗りのときもこのようになって、伸びが悪かったり、塗ったところを筆で触ると固まった顔料が動いたりします。
ラッカーのように、揮発によって流動性が悪くなって吹けなくなるのとは違うようです。
アルコールと水が主成分であるアクリル溶剤は、ラッカー溶剤に比べて溶解力は低いですから、いったん固まった塗料を溶かす力はあまりありません。そのため、代わりにラッカー溶剤で希釈するとスムースに吹けるのだと思います。
私も以前はそのようにしてましたが、今はアクリル溶剤を使うようになりました。それは、タミヤからアクリル用リターダが発売されたからです。これを使うことで、乾燥時間が遅くなるというより、前述の「塗料の中で顔料が固まっていく感じ」がほぼなくなります。
私は、新品の溶剤にあらかじめリターダを混ぜて、「リターダ入り溶剤」を作ってあります。確かに乾燥は遅くなりますが、エアブラシ塗装はそもそも早く乾きますので大して困ったことはありません。
また、塗料をハンドピースに入れる際、塗料をビンからカップに直接入れて、カップの中で調色したり溶剤と混ぜたりするかたがプロでもいらっしゃるようですが、これはハッキリ言って間違いです。
たとえ調色しない場合でも、必ずいったん塗料皿にとり、溶剤を入れてよく混ぜます。アクリル塗料は前述のように粘りが少ないので、新しければ原液でも吹けそうですが、ちょっと薄めぐらいに溶いたほうがいいように思います。
そして、このように濾してカップに移します。私は、百均のお風呂の湯アカすくい用ネットを使っています。
一見面倒なようですが、慣れればどうということはありません。また、我が家はとてもホコリっぽいので、こうすることでゴミやホコリも一緒に取り除けます。
こうして吹けば、ラッカー溶剤で溶かなくても特にトラブルもなく(皆無とはいきませんが)、迷彩のような繊細な塗装は、個人的にはラッカー塗料よりきれいに吹けると思います。
また、溶剤で下の塗膜が溶けだすこともなく安全です。
それから、エアブラシを使った後の掃除はまめに行いましょう。
このように、経路には顔料の固まりがカケラのようになって残っています。放っておくと、次に使うときにこれがノズルへ回って詰まってしまいます。
掃除にはラッカー溶剤を使って、しっかり落としましょう。
| 固定リンク
「道具」カテゴリの記事
- 缶スプレーの中身を取り出すには(2017.12.26)
- 【満席御礼】エアーブラシ講習会のご案内(2017.08.03)
- エアーブラシ講習会 続報です(2017.07.21)
- ホルベイン ブラックリセーブル筆(2017.05.23)
- 最近の金属調塗料(2017.02.11)
「あれこれ」カテゴリの記事
- 缶スプレーの中身を取り出すには(2017.12.26)
- ブルホ忘年会2016(2016.12.17)
- 模型屋訪問 <モケモケさん>(2016.12.14)
- 複製、その後(2016.10.28)
- まずは、大失敗…(2016.10.26)
「エアブラシ」カテゴリの記事
- 缶スプレーの中身を取り出すには(2017.12.26)
- アネスト岩田 カスタムマイクロン 修理 その4(2017.11.09)
- アネスト岩田 カスタムマイクロン 修理 その3(2017.11.06)
- アネスト岩田 カスタムマイクロン 修理 その2(2017.11.04)
- アネスト岩田 カスタムマイクロン 修理 その1(2017.11.02)
コメント
おはようございます!
今回の記事参考になりましたヨ^^
アクリルは・・濃い色はそれ程苦にならないのですが、特に「白」に苦しめられますね~。
リターダー試してみます。
投稿: コウ | 2010年12月14日 (火) 09時50分
コウさん、こんにちは。いつもご覧下さって、ありがとうございます。
タミヤのリターダは、たぶんユーザーの要望が多かったんだろうと思います。これが発売された年の新製品の中で、私の中では文句なしのベストアイテムでした!
投稿: Bluebell | 2010年12月14日 (火) 12時46分
いや〜、自分の横着さがまたまた身にしみました。
たしかにカップの中で直接薄めたりしちゃってます。
リターダーを使うようになってからはアクリルもわりとちゃんと吹けるようになったのですが、古いアクリル塗料のざらざらはこりゃもう直りませんね。ラッカーとアクリルの違いがまたひとつ勉強になりました。
投稿: 根生 | 2010年12月14日 (火) 14時09分
根生さん、こんにちは。
「間違いだ!」とバッサリやるのはちょっと気が引けたのですが、やっぱり間違いは間違いですから、どうか悪しからず。
でも、これ、尊敬するミグさんもやってるんですね。フクザツです…。
投稿: Bluebell | 2010年12月14日 (火) 15時18分
Bluebellさんこんばんは
う~ん、参考になりました!と言っても私は「ラッカーオンリー派」で(昔はアクリルばかりだった気がしますが・・・)すので何なんですが、アクリルの特性の勉強になりました。決して「嫌い」と言う訳ではないのですが、はて?何時から「ラッカー教」になったんだろ?
追伸、湯アカすくい!!ナイスアイディア!!うちも猫のお陰で色々と埃っぽいので試してみます!
投稿: ホワイトタイガー | 2010年12月15日 (水) 01時52分
ホワイトさん、こんにちは。
私は、こういうこと調べるのがなんか好きな性分なんでしょうね。
ラッカーオンリー、いいじゃないですか! 後工程のことを考えるとラッカーのほうがいいので、私もできればラッカーを使いたいのですが、どうも扱いが下手でして。それにやっぱりニオイがきつくて…。
投稿: Bluebell | 2010年12月15日 (水) 11時47分